一日一冊:哲学
格言は哲学的思考を害する。

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立ちつくす思想
2008.2.24 / 右の頬を殴られたらすぐ左の頬も殴られる

キリスト教を「脱出」すると銘打つ雑誌『指』に田川建三氏が書いたエッセイをまとめた本。
初版が35年以上前で、「炭坑の反合理化闘争」とか「うちの大学の全共闘は内ゲバもなく」とか、確かに見た目は古いというかピンと来ないのだけれど、原始キリスト教の内側から現代を「撃つ」(著者はこの撃つという言葉を意識的に使っていると思う)という姿勢はどこも古くさくない、2008年現在でもじゅうぶん価値がある。
一点だけ腑に落ちなかったこと。この著者の思想は力強い、というか著者個人の人間はとんでもなく「強い」。強いだけじゃなくて、自分の弱さにも逃げないところがある、そういう強さがある。しかしその著者が、いわゆる一般大衆(この「大衆」という言葉も難しいね)の強さと弱さにはどこか無頓着なところがあるように思う。決して人々の強さと弱さに気付いていないのではないが、現代思想に怜悧なメスを入れるときその要素がぽかんと抜けているような気がするところがあった。
批判めいたことを書いちゃったけれど、いっけんみんな看過してしまう表現の細かいニュアンス、そこに潜む問題に鋭敏に気付いて深くえぐり出す、そして読者に冷水を浴びせかける頑固一徹の書き方は文句なしに面白い。オススメ。
あ、キリスト教の話は実はあまり出てきません。

ニーチェ
2008.2.3 / 哲学、ニーチェ、ロバさんはイ・アーと鳴きます、ちくま学芸文庫

薄いのでさっくり読めるかと思いきや、非常に難解だった。Fは中身はほとんど理解できませんでした。
かろうじて感覚をつかめたのは「登場人物」の章。これはニーチェの理解を助ける部分があり、楽しかった。
ニーチェってどんなのだろう☆とりあえずこの本を読んでとっかかりにしてみよう、みたいな用途には向かない本。読むとしたら、一通りニーチェを読んでからこちらに進んだほうが良いか。

善の研究
2008.1.28 / 哲学

近代日本初の本格的哲学書とされる。難解だが、注釈と解説がとても丁寧で、えっちらおっちら読むかんじ。
難しいんだけど、あえて主題をまとめるなら、自己と他との関係を徹底的に叩き詰める課程、そしてその「目的」である善の考察ということになろうか。
なんでもかんでも「純粋経験」「統一的或者」で話を進めるのはどうよと言う気もするが、思考の流れは力強く、言葉遊びも無い。
読了すれば数ミリ成長できる本。

物理学と神
2008.1.27 / 科学、物理学、科学哲学、新書

科学の発展と物理学からの人間の「神」観念の変化を「神の立場」としてさまざまな物理学のエピソードを駆使し概観する。
読み物としてはいろんな話があって面白いんだけども、科学哲学としての掘り下げはやや不満が残りました。話そのものは高校で物理学を一通りやっただけのFでも楽しめました。
新書なので量が足りないのはやむをえません。

老子
2008.1.25 / 哲学、老子、講談社学術文庫

大好きな本の一つです。あっちこっちマーカーで線引きながらもう10回ぐらい読みました。薄いのでさくっと読みやすいんです。
でもこれどうやって紹介したもんですかね?「老子とはこういうものである」なんて書けんよ私は。
万物の根源は道である、とか…いやちょっと違うよなそれだけだと。月並みな言い方ですけれど、読むたびに発見があります。そしてキリスト教のようになんとなく押し付けがましいところがない。心にすっと入り込んできます。
読んでない人にはどうにも説明できないから、とにかく読んでくれ(←書評サイトで書評をあきらめる人)。中身は現代語訳で解説も豊富、読みやすいよ。

磁力と重力の発見(1)
2008.1.25 / ジャンル:科学史、物理学、歴史

磁石が反発したり引き合ったりする。下敷きで髪が浮く。リンゴが地球に落ちていく。私達現代人にはどれも当たり前で、磁力、静電気、引力によるものだと知っています。
けれども、西洋の哲学者たちにとってはそれはさっぱりわからないことで、そもそも遠隔力というものが存在することを次第に発見しなければならなかった。その過程を綿密に、物理に疎い人でも問題無いよう解き明かします。
1巻は古代・中世を扱い、プラトンやアウグスティヌス、トマス・アクィナスなどが登場します。単なる物理学の話とは思えない登場人物ですね。
理系、歴史好きにオススメ。著者は有名な方だそうですが、いかんせん世代が違うのでよくわかりませぬ。

じょうぶな頭とかしこい体になるために
2008.1.25 / ジャンル:これはジャンルはなんだろう…?あえて哲学でしょうか

副題は「五味太郎VS.子どもの疑問・悩み・希望」となっており、いちおう子供向けの体裁を取っていますが大人でも面白い。
「ぼく 外国人になりたい」「先生ってなに…」「結婚したいの」「SEXしたい」「名前を変えたい!」「お金がほしい」などなど、子供の素朴な疑問にあくまで大人からの理屈で答えます。
このあくまで理屈というのがこの本のミソで、とにかくこうなんだとか、子供向けの言い訳でなくて、できるかぎり誠実に大人の立場の理屈を組み立てるんですね。
だからこの本を子供が読んだら、半分納得して半分釈然としない顔をするでしょう。というか子供のころに読んだFがそうでした。
ちょっと理屈っぽい子供に読ませてみるのも良いし、理屈に弱い大人が読むのも良し。ただし分量の関係上、徹底的に問題を掘り下げ解明するというタイプの本ではありません。

ファウスト〈第一部〉
2008.1.25 / ジャンル:文学、伝説、ゲーテ

私達はこの書の全てを理解できるでしょうか。無理です。
ならば私達はこの書から何も得ないのでしょうか。それもまた間違いです。
人間の魂の奥深くまで掘り下げた書物には、こちらから深みへ「近づいていく」努力が必要です。その「降下」の努力に応じて何かを得ることができます。
字は細かいし量もそれなりにあるけど、読破不可能なんじゃこれって雰囲気ではありませぬ。自身の心に高みをより積み、深みをより掘り下げるためには最良の書。
ただし推理小説みたいにサクサク読めてワクワク楽しいなーみたいな、そういう雰囲気でも無いです正直なところ。